開発ストーリー|クロスミッション

開発ストーリー|クロスミッション

 《安心してシフトダウンするために》

1994年のNK1参戦(CB1000SF)で生まれたのが、削り出しクロスミッションだ。

山本英人を応援するエンジニアの「あったほうがええやろ」の一言で開発がスタートした。

その後、CBR900RR、CBR929RR、CB1300SF(5速仕様)をラインナップに加え、現在ではCB1300SF用6速クロスミッションもリリースしている。これがなかなかの人気だ。

CB1300SF 6速クロスミッション

なぜ、クロスミッションが必要なのだろうか?

「大排気量車って、トルクがあって圧縮比もそこそこ高いから、スロットルを戻したときのエンジンブレーキがきついんや。これをどうやっていなすのか? それがクロスミッションの仕事」

例えばヘアピンカーブやシケインなどで、安心して1速まで落とそうと思ったら、エンジンブレーキでギクシャクしないようなギヤ比に組み替えてあげればいい。

「エンジン回転数と車速の関係を示す車速線図を書いて、ここは何速でこれくらいと見当をつけ、テストしながら煮詰めていくんや。ミッションひとつで、ラップタイムはずいぶん変わるよ」

速度と空気抵抗も考慮する。

「シフトアップしたときに200km/h出てたら、空気抵抗が大きいからエンジン回転数を高めに保っておこう、それが100km/hならエンジン回転数が低めでも加速できるから大丈夫といった具合」

結果的に、下のほうはギヤレシオが離れ気味、上のほうは近づき気味になっていく。いずれにせよ、おいしいトルクバンドをキープして、気持ちよく加速できるようにしておくのがキモだ。

「それと、もし間違ってカン、カン、カンと1速まで落としても、なんとかなるレシオにしてあんねん。エンブレが効きすぎると怖いからなぁ」

CB1300SF 6速クロスミッション

↑CB1300SF用6速クロスミッションのシフトドラムは高精度で軽量。肉抜きの様子が美しい。

シフトドラム

↑写真奥がノーマルのシフトドラム。手前は、どこまで肉抜きできるかを見極めるための試作品。こうして限界を見極めておくのが山本イズム。

クロスミッション

↑ギヤに肉抜きを施す(赤丸部分)など、十分な強度を確保しながら、細部にわたって軽量化を推し進めているのもCB1300SF 6速クロスミッションの特徴だ。

CB1300SFの現行モデルが採用する6速ミッションと、ヤマモトレーシングの6速クロスミッションを乗り比べてみると、その印象は全く異なる。

「ノーマルの6速はオーバードライブ。あれはツーリング仕様や。ウチとこは2~6速をクロスさせて、サーキットで気持ちよくシフトダウンできる仕様。一応、1速だけは鈴鹿8耐のときよりも1歯落として、坂道なんかにも対応できるようにしてあんねん」

こうして、安全に走ることを目的に開発されているのが、クロスミッション。その気持ちよさを体験したら、誰でも虜になるに違いない。

 

→「開発ストーリー|Φ46スロットルボディ

→「開発ストーリー|Spec-A

→「ヤマモトレーシング物語|はじめに

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