SHOP訪問|Φ46 スロットルボディ

SHOP訪問|Φ46 スロットルボディ

どんなに優れていても、「取り付ける人と使う人が、その仕組みを理解していないと、効果を発揮しないパーツ」もある。Φ46スロットルボディは、まさしく、そうした製品だ。

Φ46スロットルボディ ZRX1200DAEG

ボア(ベンチュリー径)もインジェクター(燃料噴射ノズル)もノーマルとは違うのだから、ただ単に装着しただけではうまく走らない。

そのエンジンやマフラーに合わせて空燃比(*1)を調整してやって初めて、ノーマルでは望めないような滑らかさたくましさ意のまま感が手に入るのだ。

(*1)空燃比(くうねんひ)=空気と燃料の割合(空気質量÷燃料質量)。A/F(エーバイエフ)、AFRとも表記される。ガソリンが理論上、完全に燃焼する理想空燃比(ストイキオメトリー)は14.7。

近年は排出ガスを浄化するためにストイキ付近で運転されるが、低負荷時には燃費に有利な経済空燃比(薄め)、加速時には冷却にも有効な出力空燃比(濃いめ)に切り替わるなど、運転状況に応じて空燃比は刻々と変化する。このあたりの設定がメーカーやチューナーの腕の見せ所。

その調整に不可欠なのが、サブコンと呼ばれるインジェクションコントローラーである。これは各種センサー(スロットルポジションセンサーなど)とノーマルECU(エンジンコントロールユニット)の間に割り込み、センサーからの信号を増減することで、燃料噴射量をセッティングできるようにしたパーツ。

基本となる燃料噴射マップはあくまでノーマルだから、安心して手軽にセットアップできる。

これと似たものに「フルコン」と呼ばれるコントローラーもあるが、こちらはノーマルの燃料噴射&点火マップを使わずに、すべてをゼロから作り上げたオリジナルマップで制御する方式。

セッティングの自由度は広大だが、簡単にエンジンを壊してしまう恐れがあるため、よほどのことがない限りサブコンを使うのが一般的だ。

サブコン

代表的なサブコンをいくつか挙げると、ダイノジェット・パワーコマンダーラピッドバイクスペシャルエージェント・ネゴシエーターなど。

どれを選ぶのかは、スロットルボディの装着とベースセッティングを依頼する「ショップに相談して決める」のがベストだろう。そのお店が使い慣れ、ノウハウも豊富なものが、なにかとアドバイスを受けられて、結局はいちばん楽しめる。

基本的なセッティング作業は、シャーシダイナモ上でバイクを走らせながら、サブコンのソフトウエアが決めた「スロットル開度*エンジン回転数」ごとに、一定の空燃比に合わせていくことから始まる。

どんな数値に合わせるかは、バイクの種類、水温、空燃比を計測する場所などにもよるため、経験やノウハウがものをいう。同じ年式の、同じ車名の、同じグレードのバイクでも、各センサーの公差による個体差があるから、1台ずつ煮詰めていくのが現実だ。

こうしてベースセッティングが整ったら、実際に走りながら、ライダーの好みやコースの特性に応じて、細部を煮詰めていけばいい。FCRキャブレターと違って、ニードルやジェットをそろえたり、付け替えたりしなくてもすむのが、うれしいところだ。

今回、訪ねた『MSセーリング』(*2)は、このあたりの専門家としても知られているバイクショップ。2000年にデビューしたNinja ZX-12Rを「もっと乗りやすくしよう」と燃料噴射セッティングに取り組んで以来、16年にわたってノウハウを積み上げてきたというから頼りになる。

(*2)エムエス セーリング=カワサキ正規ディーラー。インジェクション・セッティングのスペシャリストとしても知られる。各種サブコンを取り扱うほか、aRacer製フルコン(燃料噴射量も点火時期もノーマルの枠を超えて完全に制御可能)を組み込んだNinja 250SLの試乗車まで用意している。

エーレーサー フルコン

近年は、トルク不足やアフターファイアーなどに悩むオーナーが訪ねてきて、サブコンによるセットアップを依頼する「駆け込み寺」的な存在になっている同店。中には、フルノーマルのバイクにサブコンをセットして、好みの乗り味に仕上げるケースもあるという。

そのメリットはどこにあるのだろうか?

「まず、排気音が変わりますね。重低音がズドンと響くようになります。トルクの出方が滑らかになるので、スロットルも開けやすい。エンジンブレーキが穏やかになるのも好評ですね」

MSセーリング

サブコンやスロットルボディを「パワーアップの特効薬」と誤解しているライダーも多いようだが、本来の役割はドライバビリティ(扱いやすさ)を大幅に改善すること。その結果として、中間域のトルクが太り、スロットルを開けやすくなるので、気持ちよく速く走れるようにもなるわけだ。

そして、これこそが、最高出力の向上よりもはるかに重要な部分。

サーキットでさえ使用時間が限られるスロットル全開領域の出力にこだわるよりも、頻繁に使う低中速域のトルクと加速のしやすさにこだわったほうが、圧倒的に気持ちよく走れるのである。

Φ46スロットルボディ ZRX1200 DAEG

MSセーリングは、Φ46スロットルボディの取り付け実績も、サブコンでのセットアップ経験も豊富。

こうしたショップが支えてくれると、安心してその性能を楽しむことができる。

 

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