ヤマモトレーシング物語|究極のCBを目指して
《2016年東京MCSに出展》
会社の経営を徐々に息子の山本聖(敬称略)にゆだね、山本英人が第一線を退き始めたら……その聖が「2016年 東京モーターサイクルショーに出展する」と言い出した。
ならば、インパクトのあるものをお披露目したい。そう考えて開発したのがCB1300SFの極太マフラーだ。
なんともたくましいエキゾーストパイプの直径は45mm。他メーカーも含めた既存の製品は、太くても42.7mmだから、まさしく常識外れの迫力と言えよう。
集合方式は、4本のエキパイが1か所で1本にまとまる4in1。CBのレッドゾーンは8500rpmとそれほど高くないから、4in2in1よりもこちらのほうがパワー的にもフィーリング的にも、そしてカッコよさにも優れると判断した。
各気筒の管長をそろえて美しくレイアウトするために、アルミ削り出しのオイルパンを組み合わせて、集合部を内側に追い込んでいるのも見どころだ。ヘッドカバーもクランクケースカバーもアルミ削り出しにして、トータルにコーディネートしている。
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吸気はオリジナルのΦ46スロットルボディを組み合わせる。
筆者が『Spec-Aチタン4-2-1/TYPE-Sサイレンサー』との組み合わせで試乗したときには、「1300」の名にふさわしい分厚いトルクと、なんとも豪快な加速、クルージングしたときの得も言われぬ心地よさに、心の底から感動したものだ。
Φ45mmの4in1エキパイは、その上を行くとしたら……。
前述したように大手4輪メーカーが一目置くほど「吸気-燃焼-排気」をトータルにデザインできるのが山本英人。そんな「エンジン屋の本格派マフラー」がSpec-Aであり、その究極の姿がこのΦ45mm・4in1マフラーなのだ。
現在はまだ試作品。これから車体に搭載し、各部のクリアランスなどを見極めながら、製品化していくという。その完成を楽しみにしよう。
《おわりに……これからが面白い》
山本英人のお客さん想いのモノづくり哲学は、2代目の聖にも、スタッフにも、しっかり受け継がれている。
そして、みんなが寄ってくるような聖の人柄も父親譲り。違うとすれば、自らが前面に立つのではなく、「能力のある人々を活かしてまとめ上げていく才能」に恵まれていることだろう。だからこそ、みんなが応援してくれる。
実はいま、山本聖のような2代目経営者たちが手を取り合って、本当にバイクが好きな人のための「モノづくりネットワーク」を作ろうとしている。お互いが競争し合うのではなく、協力してお客さんの夢を実現していく。
そうやって「お客さん想い」のモノづくりが広がっていくのは、とても喜ばしいことだ。
■著者:梶 浩之(バイクジャーナリスト・K2 Bike TRAVEL代表)
■取材協力:山本英人・山本聖(ヤマモトレーシング)/岩橋健一郎/松山哲明(ベータチタニウム) ※敬称略